緑あふれる広大な敷地を活用し、養鶏やシイタケ栽培を試みるゴルフ場が県内にある。
鳥羽市堅子(かたこ)町の
鳥羽カントリークラブ。
収穫物をゴルフ客に振る舞うためで、同業者との差別化を図っている。
生産から加工・提供までする、レジャー事業者によるちょっとした第六次産業の様相だ。
コッコッコッコ…。
18番ホールからやや離れた空き地に立つ、こぢんまりとした飼育小屋。
ウコッケイ十七羽が暮らし、この日も卵を産み落としていた。
「ウコッケイの卵は高級感があって黄身の味が濃いんです」と
空(そら)章夫支配人(68)。
レストランでだし巻き卵にして無料で提供したり、
来場記念の抽選会の賞品に充てたりしている。
敷地内を歩けば、ゴルフ場らしからぬ物は他にも出くわす。
シイタケ菌をこま打ちしたほだ木千本、ミツバチの巣箱二個、
デコポンなど果樹の苗木百六十本…。
いずれも、収穫物を客に還元しようと順次取り入れてきた。
きっかけは二年前の冬の出来事。
敷地周辺に生息し、コースの芝を荒らし回るイノシシを地元猟師の協力で捕獲した。
肉が手に入り、鍋にして客に振る舞った。
コクのある肉の温かな料理は寒い時季、好評を博した。
鳥羽など三市に七つのゴルフ場がしのぎを削る伊勢志摩地域。
「プレー代の価格競争だけでは疲弊する。別の形で特長をつくりたい」。
そう常々考えていた空支配人。
地の利を生かした農畜産物の提供を思い付いた。
活用する自然の恵みは食べ物にとどまらない。
敷地内の幼虫から育てたカブトムシのプレゼント付きゴルフプランも販売。
年配夫婦からは「孫の土産になる」と喜ばれ、手応えを感じる。
目標は明確だ。
「コース整備を徹底し、県内一と呼ばれるようなゴルフ場」と空支配人。
でも、レジャー産業だけに遊び心も大切と考える。
「来るとワクワクする遊園地のような場にもしたい」。
子どものようにほほ笑んだ。
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20130128/CK2013012802000031.html
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