鳥羽市安楽島町の主婦坂本美佐子さん(75)宅へ、
昨年夏に七十五歳で逝った夫の好(よしみ)さんから
はがきが届いた。

夫・好さんが10年前に書き、今秋届いた手紙を眺める美佐子さん
=鳥羽市安楽島町の自宅で
写真=中日新聞
二〇〇三年に十年後の開封・発送の趣向で催された市内の
タイムカプセルイベントで好さんがしたためていた。
「毎日元気で居(い)るかな」。
語り掛けるような文面は、独りで暮らす美佐子さんの心を温めている。
届いたのは今年十月中旬。
外出先から帰宅した美佐子さんは、郵便受けから取り出した
複数の郵便物の中に、灯台などの絵が印刷されたはがきがあるのに気付いた。
差出人を確認すると、一二年八月に脳の病気で亡くなった好さんだった。
鉄鋼メーカー社員だった好さんとは一九六二(昭和三十七)年に結婚し、
娘二人をもうけた。
仕事熱心で、旅行などの家族サービスも積極的。
常に周囲を気遣う性格だった。
「心の優しい人で、楽しい思い出しかない」と美佐子さん。
そんな最愛の夫と死別し、沈みがちだった中で届いた天国からの一枚に驚いた。
内容を読み、事態が飲み込めた。好さんが書いたのは、
散策イベント「歩かん会」で市内の離島・菅島を訪れた〇三年十月四日。
島内では当日、菅島灯台の点灯開始百三十周年にちなんで
鳥羽海上保安部などが、絵はがきを使ったタイムカプセルイベントの
参加を呼び掛けており、それに応じていた。
「毎日元気で居るかな」「二人で鳥羽の歩かん会へも行ってるかな」…。
文章は全部で七十字程度ながら、問い掛けるような文脈は逆に、
妻への愛情が将来も揺るがないとする宣言のように映る。
美佐子さんは「届いたときは感激で涙が止まらなかった。
夫が残した自分宛ての唯一のはがき。宝物です」。
遺影のそばに置き、大切にしている。
ソース(中日新聞)
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