今年は松阪市出身の映画監督、小津安二郎(1903~63年)の生誕110年、
没後50年にあたる。
「津駅前都市開発」は6月8日、津市羽所町のアスト津で小津映画の上映会を開く。
米ニューヨーク、仏パリで活躍するサイレント映画弁士の沢登(さわと)翠さんを
招き「全国小津安二郎ネットワーク」の藤田明会長と作品の解説をする。
上映作品は2本で、いずれも「マツダ映画社」所蔵の映像を使う。
小津は東京都江東区生まれで、小学4年の時に父の故郷である松阪市に移った。
宇治山田中学を経て、宮前尋常小学校で1年間代用教員を務めた後、
帰京して撮影助手として松竹キネマ蒲田撮影所に入社。
27年に監督デビューしてから、家族を題材とした映画を撮った。
今回上映されるのは、戦前の代表作「出来ごころ」(33年)。
東京の埋め立て地を舞台に、ビール工場で働く主人公の喜八と、弟分の次郎、
喜八が熱を上げる春江が、それぞれ幸せをつかもうとする人情味あふれる作品だ。
次郎に思いを寄せる春江のために、喜八が一肌脱ぐことから、喜八は
山田洋次監督の映画「男はつらいよ」の寅さんのルーツとも言われている。
一方、多くが東京下町の中流家庭や小市民を題材とする小津映画の中で、
本作は日雇い労働者、つぶれた製糸工場から流れてきた女などの社会の
底辺の人々が登場、小林多喜二の「蟹工船」をほうふつとさせるラストを
迎える異色の作品だ。
藤田会長は「この時期の小津の社会意識は強く、娼婦(しょうふ)と兵士を題材
とした映画、左翼団体とのつながりをうかがわせる映画を制作している。
『出来ごころ』もその流れをくむ作品だと思う」と説明する。
本作が公開された33年、ドイツでヒトラーが首相に就任、
日本では小林多喜二が虐殺された。
小津は喜劇的要素をちりばめながら、貧困層の暮らしと人情を描き、
最後は多喜二へのオマージュを投影した。
この他に「大学は出たけれど」(29年)も上映される。
マツダ所蔵の映像は約16分で、松竹版より4分長く、上映会の見どころの一つ。
入場無料。
申し込みは、
〒514-0009 津市羽所町700「津駅前都市開発 映画鑑賞係」に、
住所、電話番号、氏名、参加希望人数を書いたはがきを送る。
定員270人で先着順。30日必着。
ソース(
毎日.jp)
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