御浜町教委が管理する同町上市木の旧宅、通称「裏の屋敷」が、
古文書の宝庫として注目を集めている。
三重大の教員と熊野市の歴史愛好家らが今月調査し、
藩政期以降の史料数千点を確認した。
東紀州地域で屈指の分量があり、紀南地方の文化史再考につながると
期待される。
裏の屋敷は、市木地区の旧家で医師をしていた榎本家の旧宅。
子孫は都市部に移住したため、建物と収蔵する古文書は町に寄贈された。
解読を続けてきた同町尾呂志地区の郷土史家が近年亡くなった後、
手つかずの状態となり、町教委が三重大人文学部の塚本明教授と
熊野市の熊野古文書同好会に調査を依頼した。
市木地区などは、藩政期は新宮藩領に属し、藩が村々に年貢や
務めを課した際の文書や御触書、自然災害時の救済や復旧に関する
文献が屋敷に残っていた。
江戸幕府成立直後の一六〇四(慶長九)年に作成された
検地帳(土地測量台帳)をはじめ、三百~四百年前の古文書もあった。
紀伊半島南部で女性の巡礼者が死亡した際、
夫が村に届け出て埋葬をしたことなど、熊野古道と
住民の交流をうかがわせる史料も多い。
山や漁場をめぐる近隣の村との争いや寺社の建造、
祭礼に関わる文書もあり、近世、近代の民衆の暮らしに
迫ることができる。
塚本教授は「質、量ともに優れた古文書が多い。
御浜町の隠れた歴史と文化を明らかにする可能性を秘めており、
今後も学術的な調査と整理作業が必要だ」と話している。
町教委は今後、塚本教授らの助言を受けて、整理を進める方針だ。
ソース(中日新聞)
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